UPCとUACの活用法について

桑原 康人

クワハラ動物病院 院長
岐阜大学応用生物科学部客員獣医学系教授
日本獣医腎泌尿器学会副会長
名古屋ベテリナリーコンサルテーション アドバイザー

【どうぶつ検査センターから】

 慢性腎臓病(CKD)を診断するためには腎機能低下(糸球体濾過量の低下)と腎組織への障害(腎構造異常、腎性尿蛋白)を確認することが必要とされています。
近年、犬猫の早期腎機能マーカー(SDMA、シスタチンC)が臨床において利用可能となりましたが、早期診断には尿検査が重要となります。


【目的】
 蛋白尿は、犬猫の慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)の重要な予後因子であることが示され¹⁻³、その測定値がCKDの予後判断や治療効果の判定に積極的に利用されている。また、犬のCKDの基礎疾患は糸球体性疾患であることが多く、蛋白尿や微量アルブミン尿のスクリーニング検査がCKDの早期診断に有効とされている⁴。これらのことをふまえて犬猫におけるUPCとUACの活用法を解説する。

Point

● UPCとUACの測定は腎性病理学的蛋白尿を検出および評価するために行う
● 蛋白尿のスクリーニング検査には試験紙法を用いる
● 一過性の蛋白尿は臨床価値が低いため、検査は何回か繰り返し、蛋白尿が持続性であることを確認する
● UPC測定のための尿検体は腎後性蛋白尿を除外するために膀胱穿刺尿とする

 

蛋白尿の分類
 蛋白尿は蛋白の発生部位から腎前性蛋白尿、腎後性蛋白尿および腎性蛋白尿に分けられる。
 腎前性蛋白尿とは腎臓は正常にもかかわらず、血中に糸球体バリアを通過する低分子量の蛋白が異常に増加することによって、尿細管での再吸収能を上回って尿中にみられるもので、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿、アミラーゼ、Bence Jones蛋白などがこれにあたる。
 腎後性蛋白尿とは腎より下部で尿に蛋白が添加されてみられるもので、下部尿路や生殖器からの出血や炎症産物や分泌物などが原因となる。
 腎性蛋白尿には機能性蛋白尿と病理学的蛋白尿がある。機能性蛋白尿は犬猫ではまだよく分かっていないが、ヒトではストレス、過度の運動、極度の環境温度、発熱、腎充血などに伴ってみられ、一時的な糸球体血流や毛細血管透過性の変化が原因であると考えられており、軽度かつ一過性で臨床的意義はほとんどないとされている。
 一方、病理学的蛋白尿は腎疾患に伴ってみられるもので、糸球体性と尿細管性がある。
 通常の糸球体にはAlb(66,000ダルトン)より大きな分子量や負の電荷を持つものの濾過を妨げる糸球体バリアというものが存在するが、これが変化してAlbなどが尿に漏出するのが糸球体性蛋白尿で、重症化すれば蛋白漏出性腎症を引き起こす。
 尿細管性蛋白尿は尿細管に機能異常が起こり、糸球体で濾過された低分子量の蛋白が近位尿細管で十分再吸収されず尿に漏出するもので、軽度な蛋白尿であることが多いとされている。


尿蛋白の検出および評価法
 上記のように腎後性および腎前性蛋白尿にもそれぞれに独自の診断価値はあるが、臨床的に検出および評価すべき蛋白尿は、CKDの予後判断や治療効果判定や早期診断のために利用できる腎性病理学的蛋白尿である。よって、UPCとUACの測定は腎性病理学的蛋白尿を検出および評価するために行う。
 蛋白尿を評価するためには、患者間で尿量が異なり、同じ患者でも時間によって尿濃度が変動することから、24時間の蓄尿を行って24時間の蛋白排出量を測定する必要がある。ただし、犬猫では24時間の蓄尿は難しいので、代わりに24時間の蛋白排泄量と高い相関関係にある随時尿のUPC(尿蛋白濃度(mg/dL)/尿クレアチニン濃度(mg/dL))(mg/mg)を測定して評価する⁵'⁶。
 蛋白尿のスクリーニング検査には試験紙法を用いる。ただし、試験紙法はアルカリ尿(pH8.0以上)で偽陽性を、強酸性尿(pH3.0以下)で偽陰性を生じ、着色尿や暗い照明下での判定では偽陽性を起こすので、そのことを考慮して判定する。また、健常時に高い尿濃縮能を持つ犬猫では、試験紙法で判定した随時尿の尿蛋白濃度は24時間の尿蛋白排泄量と相関しないので、試験に供した尿の尿比重を考慮する必要がある。具体的には試験紙法の判定が(−)であれば犬猫とも非蛋白尿としてよく、猫では(±)以上では尿比重に関係なくUPCを測定して確認する必要があり、犬では判定が(+)でも尿比重が1.012を超える場合は非蛋白尿としてよく、それ以外ではUPCを測定して確認する必要がある⁷'⁸。試験紙法で蛋白尿が疑われれば、尿検査を何回か(3回以上)繰り返し(2週間毎)、蛋白尿が持続性であることを確認する。一過性の場合、機能性蛋白尿であることが多く、治療の必要はない⁹ 。
 UPCの測定のための尿検体は腎後性蛋白尿を除外するために膀胱穿刺尿とする。このことは尿培養を行う上でも必須となる。尿が混濁していると尿蛋白測定に支障をきたすことがあるので、尿上清を使用する。また、腎前性の糸球体バリアを通過する血中異常蛋白を除外するために血液検査も同時に行う。腎盂や膀胱の感染や腫瘍や炎症を除外するために尿沈渣の観察や尿培養も同時に行う。ここまでで腎後性および腎前性蛋白尿の可能性が低ければ、腎性病理学的蛋白尿が強く疑われる。UPC測定のための採尿は、犬については1日のうちいつ採取した尿を用いてもUPCは変わらないことが示めされている¹⁰'¹¹。しかし、猫については今のところそういう検討はなされていないので、朝10時なら朝10時と決めて大体いつも同じ時間に測るのが良いと考えている。

 得られたUPCの評価は表1のように評価する¹²。明らかな定義づけはされていないが、個人的にはボーダーラインの猫で0.2~0.4、犬で0.2~0.5をヒトでいう微量Alb尿、蛋白尿の猫で0.4以上、犬で0.5以上をヒトでいう顕性蛋白尿とみなすとわかりやすいと考えている。
 CKD犬(血漿Cre≧2.0 mg/dL)については、初診時のUPC1.0以上のものでは、1.0未満のものと比較して尿毒症クリーゼと死亡の相対危険度が約3倍高いということをJacobらが報告している¹。
 また、CKD猫(血漿Cre≧2.0 mg/dL)では、UPC0.2で生存期間が短縮し、UPCおよびUAC(抗猫Alb抗体を用いて測定した尿Alb濃度(mg/dL)/尿クレアチニン濃度(mg/dL))(mg/mg)の両者が有意にCRF猫の生存と関連することをSymeらが報告してい²。つまりCKDの犬猫においてUPCは重要な予後因子であることが証明されている。


表1.UPCの評価

 これらのことより、IRIS Staging of CKD (modified 2019) 12では、犬でUPC>0.5、猫でUPC>0.4の持続的蛋白尿を呈する場合、腎臓療法食と投薬(アンギオテンシン変換酵素阻害剤またはアンギオテンシン受容体遮断薬)による治療を推奨している。
 また、犬では糸球体腎疾患が多く、CRF犬76例中40例(52%)が糸球体疾患であったとの報告があり¹³、糸球体疾患では早期より蛋白尿がみられ⁴、蛋白尿のスクリーニング検査がCKDの早期診断に有効であり、やはりUPC>0.5の持続的蛋白尿を呈する場合、UPC≦0.5を目標にして腎臓療法食と投薬による治療が推奨されている¹⁷
 ヒトでは正常は超えるが従来の尿試験紙法の検出限度(蛋白質1+(約30 mg/dL))を下回る尿中Alb濃度を示す尿を微量Alb尿と呼び、糖尿病性腎症の早期検出等に利用されている¹⁴。微量Alb尿はヒトでは24時間蓄尿の尿Alb排出量または随時尿のUAC(抗ヒトAlb抗体を用いて測定した尿Alb濃度(mg/dL)/尿クレアチニン濃度(mg/dL))を測定して評価されている¹⁵。獣医では尿比重を1.010にあわせた時の尿Alb濃度が1~30 mg/dLのものを微量Alb尿とするとされており¹⁶、UAC(抗犬または猫Alb抗体を用いて測定した尿Alb濃度(mg/dL)/尿クレアチニン濃度(mg/dL))の外部機関での測定も可能となっているが、今のところ得られたUACをどのように評価し、臨床でどのように利用したらよいのかの明確な指針は示されていない。


【引用文献】

  1. Jacob F et al. Evaluation of the association between initial proteinuria and morbidity rate or death in dogs with naturally occurring chronic renal failure. J Am Vet Med Assoc. 226: 393-400 (2005) PMID: 15702689
  2. Syme HM et al. Survival of cats with naturally occurring chronic renal failure is related to severity of proteinuria. J Vet Intern Med. 20: 528-35 (2006) PMID: 16734085
  3. Kuwahara Y et al. Association of laboratory data and death within one month in cats with chronic renal failure. J Small Anim Pract. 47: 446-50 (2006) PMID: 16911112
  4. IRIS Canine GN Study Group Diagnosis Subgroup et al. Consensus recommendations for the diagnostic investigation of dogs with suspected glomerular disease. J Vet Intern Med. 27: S19-26 (2013) PMID: 24635376
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