上皮小体ホルモン(parathyroid horman:PTH)は正確に測定できているのか?

湯木 正史

湯木どうぶつ病院
名古屋ベテリナリーコンサルテーション

【どうぶつ検査センターから】
 高カルシウム血症時の鑑別マーカーとして利用されているintact PTHですが、衝撃的な論文が公開されました。現在国内での測定法はCLEIA法であり、紹介論文中でも採用された同様の測定法です。
 今回、湯木先生に『異なる測定法によって測定された犬のホールおよびインタクト上皮小体ホルモン濃度の比較』について解説して頂きます。


【目的】
 PTHは外部依頼検査によって測定が可能であるが、時折、その結果が臨床徴候や、他の臨床病理検査結果に反映しておらず、解釈に困惑することがある。ここでは、PTH濃度の測定に関して近年報告された論文をもとに、検査によって得られたPTH濃度の解釈について考えてみたい。


【紹介論文】

異なる測定法によって測定された犬のホールおよびインタクト上皮小体ホルモン濃度の比較

Mooney CT, et al. A comparison of canine whole and intact parathyroid hormone concentrations as measured by different assays. J Small Anim Pract. 60: 507-513 (2019) PMID: 31017670


目的:
免疫放射定量によるインタクト(intact-)上皮小体ホルモン(PTH)測定を、(1)非放射性法および(2)免疫放射定量によるホール(whole-)PTH測定と比較すること


材料と方法:
intact-PTH濃度は、免疫放射定量(Scantibodies)および化学発光(Immulite 2000)法を使用し測定した。


結果:それぞれ、合計48および47サンプルを使用して、免疫放射定量および化学発光法によるintact-PTH濃度と、免疫放射定量によるintact-およびwhole-PTH濃度を比較した。
化学発光を用いた3981.3%)のサンプルは、報告されている検出限界(0.3 pmol/L)以下のintact-PTH濃度を示した。
intact-[6.3 (2.0-95.5) pmol/L]とwhole-[3.3 (0.8-125.2) pmol/L] の免疫放射定量PTH濃度は、優れた相関を示した。

図1.免疫放射定量法(IRMA)と化学発光法(CLIA)を使用した犬の血漿intact PTH濃度測定(pmol/L)のドットプロット図。
測定可能なCLIA値は、該当するIRMA濃度に色分けをした。

臨床的意義:すべてのPTH測定が同様に実施されるわけではない。この研究における化学発光法は、犬での使用を推奨することはできない。免疫放射定量によるintact-PTHの測定は、より信頼性の高い方法であることが証明された。intact-PTH濃度とwhole-PTH濃度との相関関係を考慮すると、日常的な臨床判断にどちらが優れているかは依然として不明である。


【私の意見】
 私の知る限り、本邦でのPTHの測定法は、化学発光法によるintact-PTHの測定であることから、紹介論文を参考にすると正確に測定できていない可能性がある。特に高値領域以外での測定は不確かであることを示しており、これらの結果がPTH濃度の解釈を困難にしている可能性がある。PTH濃度の測定は、高カルシウム血症の鑑別診断には必須不可欠であり、早期に新たな測定方法が確立されるべきである。