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なぜ腎外作用が重要なの??

例えば、腎機能を評価するマーカーの一つである血中尿素窒素は、腎機能低下以外に高タンパク食、ステロイド投与、消化管出血、循環血流などの影響により上昇することが広く知られています。
そのため、尿素窒素が上昇した時、この上昇は腎機能低下によるものなのか、または
腎機能以外の影響によるものなのかを、臨床現場で評価していると思います。

★POINT★ 腎機能マーカーの腎外作用を知ること≒正確な腎機能を評価すること!

この記事では、早期に腎機能低下を捉えるマーカーとして知られている血清シスタチンC濃度が、どのような腎外作用に影響を受けるのかを解説していきます!

 

目次
1.シスタチンC濃度への影響
  ・まとめ


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体重の影響


血清シスタチンC濃度は体重に影響することが知られています。

体重が増加するほど、血清シスタチンC濃度は上昇します。

しかし、宮川先生の研究では体重20 kg以下であれば、血清シスタチンC濃度に影響せず測定することが可能であることが報告されています。

従って、血清シスタチンC濃度は20 kg以下の犬に有用な腎機能マーカーとなります¹。

 

年齢の影響


血清シスタチンC濃度は高齢になるにつれて上昇傾向となります。

これを聞いた先生方は「腎臓病を早期に発見したいのに、高齢になるにつれ血清シスタチンC濃度が上昇するのは、欠点が大きすぎる」と思うかもしれません。

しかし、この現象はごく自然のことで、犬も人も加齢と共に、糸球体濾過量は少なからず低下していきます。

血清シスタチンC濃度はこの加齢による潜在的な糸球体濾過量低下を検出するため、加齢に伴い上昇傾向となります。

★POINT★ 血清クレアチニン濃度は年齢の影響を受けることはない為、加齢による潜在的な糸球体濾過量低下を検出できない可能性が示唆されている!

【図1】

我々の研究では、8歳を超えた健常犬の血清シスタチンC濃度は0.53 mg/Lまで加齢によって上昇することが解析されました。

つまり、血清シスタチンC濃度が0.54 mg/L以上では、腎臓病などによる糸球体濾過量低下を引き起こしている可能性があります。

従って、血清シスタチンC濃度 が0.40〜0.53 mg/Lまでは加齢による糸球体濾過量低下なのか、それとも腎臓病などによる糸球体濾過量低下なのか鑑別する必要があります。

鑑別するために当院では血液検査(電解質、尿素窒素、クレアチニン、無機リン)、血圧検査、尿検査(尿比重、UPC)、画像検査(腎臓の形態)などの検査で腎臓を総合評価しています。

これらの検査で鑑別が困難な場合、経過観察または糸球体濾過量の測定(イヌリンクリアランス)を推奨しています。

血清シスタチンC濃度が0.55 mg/Lを越えた場合は腎臓病の予後に注意する必要があります。

 

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性別の影響


★POINT★ 血清シスタチンC濃度は性別に影響せず、血清クレアチニン濃度は未去勢雄で高値を示す!

 

【図2】

血清シスタチンC濃度は過去の報告でも性別の影響を受けないことが報告されており、我々の解析でも同様の結果でした。

雄犬において血清クレアチニン濃度が高値となる結果も過去の報告と同様であり²'³、これは筋肉量に影響していると考えられます。

つまり、血清シスタチンC濃度は性別間に差が見られず、筋肉量の影響を受けないことが示唆されました。

 

犬種の影響

 

★POINT★ 血清シスタチンC濃度は犬種による影響を受けない!(15kg以下の犬種限定)

我々の解析では、血清クレアチニン濃度は柴犬で高値、ミニチュアダックス、チワワで低値となりました。

【図3】

血清シスタチンC濃度は犬種による差はありませんでしたが、血清クレアチニン濃度は犬種による差がみられました。

血清クレアチニン濃度は筋肉量および体重と相関することが知られており⁴、今回の結果は筋肉量や体重の影響であると考えております。

 

まとめ


ズバリ、血清シスタチンC濃度の腎外作用は『体重』『年齢』です⁵。

① 血清シスタチンCは20kg以下の早期に腎機能低下を捉えるマーカーである
② 血清シスタチンC濃度 0.40~0.53mg/Lは、加齢による糸球体濾過量低下なのか、腎臓病などによる糸球体濾過量低下なのか鑑別する必要がある
③ 性別、犬種による影響は受けない

 

以上、血清シスタチンC濃度が腎外作用に影響される記事でした。

上記の解析が日常診療の早期腎臓病の発見に繋がれば幸いです。

拝読していただき誠にありがとうございました。

  1. Miyagawa Y, Akabane R, Ogawa M, et al. Serum cystatin C concentration can be used to evaluate glomerular filtration rate in small dogs. J Vet Med Sci 2021; 82:1828–
  2. Braun JP, Lefebvre HP, Watson AD. Creatinine in the dog: a review. Vet Clin Pathol 2003; 32:162–179.
  3. Connolly SL, Nelson S, Jones T, et al. The effect of age and sex on selected hematologic and serum biochemical analytes in 4,804 elite endurance-trained sled dogs participating in the Iditarod Trail Sled Dog Race pre-race examination program. PLOS ONE 2020; 15:e0237706.
  4. Braun JP, Perxachs A, Perchereaus D, et al. Plasma Cystatin C in the Dog: Reference values and variations with renal failure. Clin Pathol 2002; 11:44-49.
  5. Iwasa N, Takashima S, Iwasa T, et al. Effect of age, sex, and breed on serum cystatin C and creatinine concentrations in dogs. Vet Res Commun 2022; 46:183-188.

シスタチンCについてもっと知りたい方は

どうぶつ検査センター(株)の会員向け診断支援事業「COMPASS」でお読み頂けます。

 

 

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東海地域を中心に動物の臨床検査を受託
2021年には診断支援事業「COMPASS」を立ち上げた